こんな方に役立つ記事です
結論:緩み止めの選び方早見表
緩み止めは「部品を足す前に、まず正しい力で締める」が大前提です。そのうえで、状況に合う方法を選びます。
| 状況 | おすすめ対策 | コスト | 取り外し |
|---|---|---|---|
| すべての締結の土台 | 適正トルクでしっかり締める(締め付け不足は緩みの元) | ― | ― |
| 一般機械・あとで分解する | ねじロック剤(中強度・青) | ○ 中 | ○ 工具で外せる |
| 振動がある・再使用したい | ロックナット(ナイロンインサート等) | △ やや高 | ◎ 外せる |
| 激しい振動・重要部位 | 専用の緩み止めナット または ロック剤(高強度・赤) | △ 高め | △ 赤は加熱が必要 |
| 部品が手元にない・現場の応急 | ダブルナット(正しい手順で) | ◎ 安い | ◎ 外せる |
| 電気部品のアース接続 | 歯付き座金 | ◎ 安い | ◎ 外せる |
| 振動の少ない一般用途 | ばね座金(※振動の緩み止め効果は限定的) | ◎ 安い | ◎ 外せる |
⚠️ 以前は「迷ったらばね座金」と言われることもありましたが、横方向の振動による緩みを止める効果は限定的とされています(くわしくは下の「ばね座金」の項)。振動で緩んだ実績がある箇所は、ロック剤(青)かロックナットに切り替えるのが近道です。
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なぜネジは緩むのか|大きく2つのタイプ
イメージは「握った拳が、揺すられて開いてくる」
ぎゅっと握りしめた拳も、誰かにずっと小刻みに揺すられ続けると、少しずつ力が抜けて開いてきますよね。ネジの緩みも同じです。ネジを締めると、ボルトはばねのように少し伸びて、部品同士を押さえつける力(軸力)を生みます。振動や時間の経過で、この軸力が少しずつ逃げていくのが「緩み」の正体です。
ネジの緩みは、大きく2つのタイプに分けられます。
| タイプ | 何が起きる? | 主な原因 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 回転する緩み | ナットやボルトが戻る方向に回ってしまう | 振動・衝撃、特にボルトと直角方向(横)の振動 | ロック剤・ロックナット・ダブルナット |
| 回転しない緩み | ネジは回っていないのに、押さえる力だけが減る | 座面のなじみ・へこみ、温度変化、柔らかい材料(ガスケット・樹脂など)の変形 | 増し締め・座金で座面を広げる・材料の見直し |
① 回転する緩み(振動・衝撃)
いちばん厄介なのがこれです。ボルトに横方向の振動がかかると、ねじ山や座面がわずかに滑り、そのたびにナットが少しずつ戻ります。1969年にドイツのユンカー氏が考案した試験(ユンカー試験)は、この横振動を与えて緩みやすさを比べる方法で、今も緩み止め部品の評価に使われています。
② 回転しない緩み(なじみ・温度・材料)
💡 プロのひと言: 現場で「緩んだ」と相談を受けると、そもそも締め付けが足りなかったケースが少なくありません。軸力が十分なら、多少の振動では緩みにくくなります。緩み止め部品を選ぶ前に、まずは適正な締め付けトルクで締めているかを確認してください。
緩み止めの"3つの作戦"
緩み止めの方法はたくさんありますが、やっていることは大きく3つに分けられます。
① ねじロック剤(嫌気性接着剤)
ネジ山に塗って締めると、すき間で固まってネジを固定します。代表ブランドはロックタイト(ヘンケル社)です。
| 強度 | ロックタイトの色の例 | 主な用途 | 外し方 |
|---|---|---|---|
| 低強度 | 紫 | 小さいネジ・調整ネジ・柔らかい金属のネジ | 普通の工具で外せる |
| 中強度 | 青 | 一般機械の標準 | 普通の工具で外せる |
| 高強度 | 赤 | 激しい振動・ほぼ恒久固定 | 250℃以上に局所加熱してから外す |
| 浸透型 | 緑 | 組み立て後のネジに染み込ませる | 製品の説明による |
⚠️ 色と強度の対応はメーカー(ロックタイト/スリーボンドなど)で違います。必ず製品の強度表示を確認してください。
向いている場面:モーター・ポンプ・コンプレッサーなど振動のある機械、ネジ部からの漏れも防ぎたい箇所
注意点
☕ ちょっと余談:ロック剤は"空気が嫌い"だから固まる。 ねじロック剤(嫌気性接着剤)の面白いところは、空気に触れている間は固まらず、ネジを締めて空気が遮断されると固まること。だからボトルの中(空気あり)では液体のまま、ネジ山のすき間(空気なし+金属)に入った瞬間に"硬化スイッチ"が入ります。塗ってもすぐ固まらず焦らなくていいのは、この性質のおかげ。"嫌気性=空気を嫌う"をうまく使った、化学の知恵なんです🧪
② ロックナット(専用の緩み止めナット)
構造的に緩みにくく作られたナットです。
注意点
☕ もうひとつ余談:「緩まないナット」のヒントは神社の鳥居。 くさび式の「ハードロックナット」は、大阪のハードロック工業の創業者・若林克彦氏が考案し、1974年に会社を興して世に出したものです。神社の鳥居に打ち込まれた"くさび"にヒントを得たと紹介されていて、新幹線・瀬戸大橋・東京スカイツリーなど、緩んでは困る場所で採用されてきました。昔ながらの大工の知恵が、最先端の安全を支えているんです🚄
③ ダブルナット(二重ナット)
ナットを2つ重ねて、互いに突っ張らせて緩みを防ぐ古典的な方法です。部品を新しく買わなくてもできるので、現場の応急対策にも使えます。
正しい締め方(ここを間違える人が多い)
⚠️ 「上下を逆にする」「④の突っ張らせる工程を省く」と、効果がほとんど出ません。
④ 歯付き座金・フランジナット(セレート付き)
座面のギザギザが相手の面に食い込んで、回転を防ぎます。歯付き座金は電気機器のアース接続(電気をしっかり通す)にもよく使われます。
注意点:相手の面に傷が付くので、外観部品や塗装面には不向きです。
⑤ ばね座金(スプリングワッシャー)
もっとも身近な座金ですが、振動による緩みを止める効果は限定的とされています。ユンカー試験で、ばね座金では横振動による緩みを防ぎにくいことが示され、ドイツの規格(DIN)ではばね座金の規格が代わりの規格なしで廃止されました。
今の使いどころ:振動の少ない一般用途や、既存の設計でばね座金が指定されている箇所。振動で緩んだ実績がある箇所は、ロック剤やロックナットに切り替えましょう。座金の種類と寸法は座金(ワッシャー)の種類と寸法早見表にまとめています。
状況別おすすめパターン
屋内の什器・家具で緩むのを防ぎたい
→ 適正トルクでしっかり締めるのが第一。それでも緩むならロック剤(青)を。
モーター・ポンプまわりで緩む
→ ロック剤(青・中強度)。分解整備もでき、実務のバランスが良い方法です。
振動の激しい重要部位
→ 強度区分の合ったボルト+専用の緩み止めナット、または高強度ロック剤(赤)。締め付けトルクの管理もセットで。
高温になる箇所(エンジン・ボイラーまわり)
→ ナイロンインサートナットは避けて、全金属製の緩み止めナットや、耐熱タイプのロック剤を。
食品機械でロック剤を使いたい
→ 食品機械向けの登録(NSF P1など)を受けたロック剤を選びます。
やってはいけないNG例
まとめ
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緩み止め対策のご相談は三和ファスナーへ
「この振動ならどの対策がいい?」「コストと効果のバランスが良いものは?」——緩み止めは、現場ごとに答えが変わります。
名古屋市中川区の三和ファスナーでは、ロックナット・座金・ロック剤対応のボルトなどを1個から手配します。今ついているボルト・ナットの写真があれば、サイズの確認もお任せください。在庫品のお見積りは即日、特殊品は原則1〜2営業日でお返事します。
この記事の出典
よくあるご質問
Q.ばね座金(スプリングワッシャー)は緩み止めとして効果がありますか?
A.振動による緩みを止める効果は限定的とされています。1969年に発表されたユンカー試験(ボルトに横方向の振動を与える試験)で、ばね座金では緩みを防ぎにくいことが示され、ドイツの規格(DIN)ではばね座金の規格が代わりの規格なしで廃止されています。振動の強い箇所では、ねじロック剤やロックナットを選んでください。
Q.ねじロック剤(ロックタイト)の色はどう選べばいいですか?
A.ロックタイトの場合、紫=低強度(小さいネジ・調整ネジ)、青=中強度(一般機械の標準・工具で外せる)、赤=高強度(ほぼ恒久固定・外すときは加熱が必要)、緑=浸透型(組み立て後に染み込ませる)が目安です。色と強度の対応はメーカーで違うので、必ず製品の強度表示を確認してください。
Q.赤のロック剤で固めたボルトは外せますか?
A.外せますが、加熱が必要です。メーカー(ヘンケル)の案内では、ボルト・ナットを局所的に250℃以上に温めてから外します。加熱せずに無理に回すと、ボルトが折れることがあります。
Q.ダブルナットの正しい締め方は?
A.薄いナットを下(相手材側)、厚いナットを上にします。①下ナットを締める ②上ナットを締める ③上ナットをスパナで押さえたまま、下ナットを逆方向に回して上ナットに突っ張らせる、の順です。③を省くと緩み止めの効果が出ません。ボルトの先端は上ナットから3山以上出しておきます。
Q.一番確実な緩み止めはどれですか?
A.万能な方法はありません。まず大前提として、適正なトルクでしっかり締めること(締め付け不足は緩みの元)。そのうえで、一般機械なら中強度のロック剤(青)やナイロンインサートナット、激しい振動の重要部位なら専用の緩み止めナットや高強度ロック剤、と振動の強さ・分解の有無・温度で選びます。
Q.SUS(ステンレス)でも緩み止め対策は必要ですか?
A.必要です。緩みやすさは材質より、振動や締め付け力で決まります。ただしステンレス同士のボルト・ナットは「かじり(焼き付き)」が起きやすいので、潤滑剤を使ってゆっくり締めてください。
この記事の監修

株式会社三和ファスナー創業者。2003年の創業以来、20年以上にわたりネジ・ボルト・ファスニング関連商品の販売と特殊切削加工に携わる。製造業・建設業向けの選定相談・トラブル対応を多数手掛ける名古屋エリアのファスニング専門家。
本記事は上記監修者の監修のもと作成しています。公開後の更新(数値の確認・表現の修正など)は、規格や公的資料をもとに編集担当が行っています。記載内容は一般的な情報であり、個別案件のご判断は必ず原典規格・図面に基づき、必要に応じて専門家にご相談ください。
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