こんな方に役立つ記事です
結論:3秒でわかる選び分け
| 使う環境 | おすすめ |
|---|---|
| 屋内・乾いた場所 | SUS304で十分 |
| 屋内・湿気あり(水回りの近く) | SUS304 |
| 屋外(雨が当たる程度) | SUS304 |
| 食品機械(一般) | SUS304 |
| 海の近く・潮風が当たる | SUS316 |
| 塩水・融雪剤(塩化カルシウム)がかかる | SUS316 |
| 塩素系の薬品・消毒剤を使う | SUS316(濃度によってはSUS316でも不十分) |
| 化学プラント・医薬品の設備 | SUS316 / SUS316L |
| 温泉など、塩分・硫黄分を含む環境 | SUS316以上を検討(成分しだいなので要相談) |
SUS304とSUS316の成分の違い
どちらもオーステナイト系と呼ばれるステンレスですが、含まれる元素の割合が違います。
| 成分 | SUS304 | SUS316 | SUS316L |
|---|---|---|---|
| クロム(Cr) | 18〜20% | 16〜18% | 16〜18% |
| ニッケル(Ni) | 8〜10.5% | 10〜14% | 12〜15% |
| モリブデン(Mo) | なし | 2〜3% | 2〜3% |
| 炭素(C) | 0.08%以下 | 0.08%以下 | 0.030%以下 |
※ JIS G 4303 などの規格値(質量%)。主な成分だけを抜き出しています。
違いの本質:モリブデンの有無
SUS316のいちばんの特長は、モリブデン(Mo)を2〜3%加えていることです。これで、塩化物(塩分・塩素)による錆、特に孔食(こうしょく)に強くなります。
たとえるなら「傘」と「カッパ+長靴」
その差を生むのがモリブデン。いわば「塩と薬品から身を守る特別な装備」を、SUS316だけが身につけているイメージです。
耐食性の違い(具体的に)
SUS304が得意な環境
SUS316が必要な環境
数字で見る「塩分への強さ」:耐孔食指数(PRE)
ステンレスの孔食への強さは、耐孔食指数(PRE)という目安で比べられます。
PRE = クロム(%) + 3.3 × モリブデン(%) + 16 × 窒素(%)
モリブデンには3.3倍の重みがあるので、モリブデンを含むSUS316は数字が大きくなります。代表的な成分で計算した例では、SUS304が約19、SUS316が約24です。数字が大きいほど、塩分のある環境で孔食が起きにくいと考えます(あくまで比べるための目安で、表面の仕上げや環境によって実際の結果は変わります)。
塩分で起きる錆:孔食とすきま腐食
塩分のある場所では、SUS316を選ぶのと合わせて、水がたまらない・乾きやすい取り付け方を考えるのも大切です。
ステンレスでも錆びる・トラブルになる原因
ステンレスは「絶対に錆びない」わけではありません。現場でよくある原因をまとめました。
| 原因 | 何が起きる? | 対策 |
|---|---|---|
| もらい錆 | 鉄粉や鉄の切りくずが付いて、その鉄が錆びる | 鉄用の工具と分ける・付いた鉄粉を落とす |
| 異種金属接触腐食(いわゆる電食) | 別の金属と触れたところに水があると、錆びやすい側が腐食する(例:ステンレスボルト+アルミ板ではアルミ側) | 絶縁ワッシャーを使う・材質をそろえる |
| すきま腐食 | すき間にたまった塩水で錆びる | 水がたまらない構造に・SUS316を検討 |
| 溶接部の鋭敏化 | 溶接の熱で、溶接まわりが錆びやすくなる | 溶接するならL材(SUS304L・SUS316L) |
| 材質違い | 頼んだグレードと違う材料だった | ミルシートの確認・信頼できる仕入先から調達 |
| かじり(焼き付き) | SUS同士のボルト・ナットが締める途中で固着する | 潤滑剤を使い、ゆっくり締める |
材質違いは、実際に起きています。広島市産業振興センターの相談事例では、海外に「SUS316L」で発注した撹拌用の部品が数か月で激しく腐食し、分析するとモリブデンが検出されず、成分からSUS304と推測された例が紹介されています。
かじりは、SUS304とSUS316を組み合わせても同じ系統のステンレスなので防ぎにくいのが注意点です。くわしくはネジ・ボルトの典型トラブル7選をどうぞ。
磁石で見分けられる?
| 材質 | 磁石 |
|---|---|
| SUS304 | 基本つかない(冷間加工した部分は少しつくことがある) |
| SUS316 | 基本つかない |
| SUS430(18-0) | つく |
磁石でわかるのは「SUS430のような、磁石につくステンレスかどうか」までです。SUS304とSUS316は磁石では見分けられません。グレードを確かめたいときは、ミルシートか成分分析で確認します。
ねじの材料に多い「SUSXM7」「SUS304J3」とは
ステンレスのねじは、針金状の材料の頭を常温で叩いて形を作る(冷間圧造)ことが多く、加工しやすい専用の材料が使われます。代表が、SUS304に銅(Cu)を加えて加工しやすくしたSUSXM7やSUS304J3です(冷間圧造用ステンレス鋼線、JIS G 4315)。鋼線メーカーの資料でも、SUSXM7は「ねじ加工用に広く使用」されている材料と紹介されています。
SUSXM7は、SUS304に比べて加工したあとも磁石につきにくいのも特長です(鋼材メーカーの資料より)。ミルシートの鋼種名が「SUSXM7」になっていても、SUS304をもとにねじ用に加工しやすくした材料だと考えてください。
コスト比較
| 価格の目安(SUS304を1とした場合) | |
|---|---|
| SUS304 | 1.0(基準) |
| SUS316 | 約1.5〜2倍 |
※ 相場・サイズ・数量で変わります。SUS316はSUS304より流通量が少なく、サイズによっては取り寄せになることもあるので、価格とあわせて納期も確認しましょう。
ボルト・ナットでの規格表記
ステンレスのねじは、材料名とは別に、鋼種のグループと強度区分で表します(ISO 3506-1/JIS B 1054-1)。
| 表記 | 意味 | 対応する材質 |
|---|---|---|
| A2-70 | オーステナイト系・引張強さ 700N/mm²以上 | SUS304系 |
| A2-50 | 引張強さ 500N/mm²以上 | SUS304系(低強度) |
| A4-70 | モリブデン入り・引張強さ 700N/mm²以上 | SUS316系 |
| A4-80 | 引張強さ 800N/mm²以上 | SUS316系(高強度) |
→ 注文するときは「SUS304(A2-70)のM10」のように、材料と強度区分をそろえて伝えるのが確実です。
「L」付き低炭素ステンレス(SUS304L / SUS316L)
末尾の「L」は低炭素(Low Carbon)の意味で、炭素を0.030%以下に抑えたものです。
ねじ単体なら「L」なしで足りることがほとんどですが、ねじを溶接で固定する使い方ならL材を検討します。
使い分けの判断フロー
ステップ① 環境チェック
ステップ② コストと納期のチェック
ステップ③ 規格の指定
まとめ:SUS304かSUS316か、迷ったときの3原則
「うちの環境ならどっち?」は、名古屋の三和ファスナーへ
使う環境・サイズ・本数をお伝えいただければ、SUS304・SUS316・SUS316Lのどれが合うかをご提案し、1個から手配します。ミルシート(材料証明書)が必要な場合は、ご注文時にお知らせください(品目・メーカーによって対応が異なるため、確認してご案内します)。在庫品のお見積りは即日、特殊品は原則1〜2営業日でお返事します。
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この記事の出典
よくあるご質問
Q.SUS304なのに磁石にくっつくのはなぜですか?
A.SUS304は本来、磁石につかない材料ですが、曲げ・引き抜き・ねじの頭の成形などの冷間加工を受けた部分は、組織の一部が変化して(加工誘起マルテンサイト)、少し磁石につくことがあります。材質としてはSUS304で間違いありません。
Q.SUS316と書いてあるのに錆びたのはなぜですか?
A.主な原因は、①表面に付いた鉄粉の錆(もらい錆)、②アルミなど別の金属との接触(異種金属接触腐食)、③ボルトと座金のすき間などに塩分がたまる「すきま腐食」、④溶接部の鋭敏化、⑤そもそも材質が違う、のいずれかです。公的機関の相談事例でも、「SUS316L」で発注した部品からモリブデンが検出されず、実際はSUS304相当だった例が報告されています。
Q.SUS304とSUS316は見た目や磁石で見分けられますか?
A.見分けられません。どちらも見た目はほぼ同じで、どちらも基本的に磁石につきません。確かめるには、材料証明書(ミルシート)で確認するか、蛍光X線分析などの成分分析でモリブデンの有無を調べます。信頼できる仕入先から調達することがいちばんの対策です。
Q.食品工場ではSUS304とSUS316のどちらを使いますか?
A.一般的な食品ライン(パン・菓子・乳製品など)はSUS304で足りることがほとんどです。塩分の多い食品(漬物・醤油・水産加工など)を扱うラインや、塩素系の洗浄剤・消毒剤をよく使う場所では、SUS316を検討します。
Q.「A2-70」と「SUS304」は同じものですか?
A.呼び方の種類が違います。SUS304は材料(鋼種)の名前、A2-70はステンレスのねじの区分(ISO 3506-1/JIS B 1054-1)で、A2が鋼種のグループ(SUS304系のオーステナイト系)、70が強度区分(引張強さ700N/mm²以上)を表します。ボルトを注文するときは「SUS304(A2-70)」のように両方伝えると確実です。
Q.SUS316はSUS304より強いのですか?
A.強さはほぼ同じと考えてください。違うのは塩分・薬品への強さです。ボルトの強さは材料名ではなく、A2-70・A4-70などの強度区分で決まります。
この記事の監修

株式会社三和ファスナー創業者。2003年の創業以来、20年以上にわたりネジ・ボルト・ファスニング関連商品の販売と特殊切削加工に携わる。製造業・建設業向けの選定相談・トラブル対応を多数手掛ける名古屋エリアのファスニング専門家。
本記事は上記監修者の監修のもと作成しています。公開後の更新(数値の確認・表現の修正など)は、規格や公的資料をもとに編集担当が行っています。記載内容は一般的な情報であり、個別案件のご判断は必ず原典規格・図面に基づき、必要に応じて専門家にご相談ください。
このネジ、1個から手配できます
「SUS304とSUS316の違い|成分・耐食性・コスト・選び方」に関するネジ・ボルトは、名古屋の三和ファスナーが1個から手配します。
型番がわからなくても、写真1枚から規格を特定。材質・サイズの選定や特殊品の製作もご相談ください。