こんな方に役立つ記事です
「SUS304とSUS316、どっちを選べば?」と毎回迷っている方
食品機械・水回り・屋外設備で耐食性のグレード選びに困っている方
コストと安全性のバランスを取りたい設計者・購買担当の方
結論:3秒でわかる選び分け
環境おすすめグレード
屋内・乾燥SUS304で十分
屋内・湿気ありSUS304
屋外(降雨程度)SUS304
食品機械(一般)SUS304
海岸近く・塩素環境SUS316
化学プラント・薬品SUS316 / SUS316L
医療・薬品設備SUS316L
温泉設備(硫黄含む)SUS316
📌 「9割の場面はSUS304で足ります」。SUS316が必要なのは塩分・薬品が絡む特殊環境のみ。SUS316を選ぶときは「本当に必要か?」を一度立ち止まって確認しましょう。
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SUS304とSUS316の成分の違い
両方ともオーステナイト系ステンレスですが、含まれる元素の比率が異なります。
成分SUS304SUS316
クロム(Cr)約18%16〜18%
ニッケル(Ni)8〜10.5%10〜14%
モリブデン(Mo)なし2〜3%
炭素(C)0.08%以下0.08%以下
違いの本質:モリブデンの有無
SUS316の最大の特長は モリブデン(Mo)2〜3%の添加。これにより塩化物イオン(塩分・塩素)に対する耐食性が大幅に向上します。
たとえるなら「傘」と「カッパ+長靴」
SUS304 = 普通の傘。雨や水道水くらいなら、しっかり防いでくれる頼れる定番。
SUS316 = カッパ+長靴のフル装備。海のしぶき・薬品・融雪剤など、傘では太刀打ちできない"嵐"の中でも平気。
その差を生むのがモリブデン。いわば「塩と薬品をはじく特殊な盾」を、SUS316だけが装備しているイメージです。
💡 プロのひと言: 普段の雨に長靴がいらないのと同じで、塩・薬品が無い場所にSUS316は"オーバースペック"。値段は1.5〜2倍なのに性能を活かしきれません。だからこそ「9割の場面はSUS304で足りる」のです。「念のためSUS316」は、実はコストの取りこぼしになりがちです。
☕ ちょっと余談:あなたのスプーンの裏に「18-8」と書いてあるかも。 ステンレスの食器やキッチン用品の裏に「18-8」という刻印を見たことはありませんか? これ、実はクロム18%・ニッケル8%という意味で、ほぼSUS304のことなんです。つまり毎日使っているスプーンやボウルと、工場の機械を留めるSUS304ボルトは"親戚"。意外と身近なところに、ステンレスの世界は広がっているんです🍴
耐食性の違い(具体的に)
SUS304が得意な環境
雨水・水道水
弱酸・アルコール
一般的な大気環境
食品(油脂・糖分など)
屋外(海岸から離れた地域)
SUS316が必要な環境
海水・塩水(海岸から2km以内も含む)
塩素系薬品(次亜塩素酸・カルキ)
温泉水(硫黄・塩分)
塩化カルシウム(融雪剤)
医薬・薬品プラント
よくあるトラブル:「孔食(こうしょく)」
SUS304を塩素環境で使うと、ピンホール状の局所腐食が発生することがあります。表面は綺麗に見えても内部に穴が空く現象で、構造材では致命的。塩分環境では迷わずSUS316を選びましょう。
コスト比較
価格目安(SUS304比)
SUS3041.0倍(基準)
SUS316約1.5〜2倍
SUS316L約1.6〜2.1倍
💡 過剰品質を避けるコツ:「屋内・乾燥環境にSUS316を使うのは1.5〜2倍のコストの無駄」です。要件を満たす最低限のグレードを選ぶのが賢い設計。
ボルト・ナットでの規格表記
ステンレスねじは「強度区分」も合わせて指定します。
表記意味対応材質
A2-70オーステナイト系・引張強さ 700N/mm²SUS304相当
A2-50引張強さ 500N/mm²SUS304相当(低強度)
A4-70モリブデン入り・引張強さ 700N/mm²SUS316相当
A4-80引張強さ 800N/mm²SUS316相当(高強度)
→ 国際規格ISO 3506の表記。発注時に「A2-70のM10」のように指定するのが正確。
「L」付き低炭素ステンレス(SUS304L / SUS316L)
末尾に「L」が付くのは低炭素版(Low Carbon、炭素0.03%以下)。
メリット:溶接後の「鋭敏化」(粒界腐食)が起きにくい
デメリット:通常版より強度がやや低い
採用場面:溶接構造の多い化学プラント・医薬設備
ねじ単体ではほぼ「L」なしで十分ですが、ねじを溶接で固定する用途ならL材を指定します。
使い分けの判断フロー
ステップ① 環境チェック
1.塩分・塩素にさらされる? → YES なら SUS316へ
2.薬品環境? → 薬品種類でSUS316 / SUS316L へ
3.それ以外 → SUS304で十分
ステップ② コストチェック
1〜10本程度の少量 → 迷ったらSUS316(差額が小さい)
数百本以上の大量発注 → グレードを精査してコスト削減
ステップ③ 規格の指定
ボルト:A2-70(SUS304)/ A4-70(SUS316)
ナット:同上
ワッシャ:材質指定(強度区分なし)
よくある質問
Q. SUS304だけどユニクロみたいに磁石にくっつくのは何で?
A. SUS304は本来は非磁性ですが、加工硬化(プレス・冷間引抜)で一部磁性を帯びます。これは「加工誘起マルテンサイト」と呼ばれる現象で、材質的にはSUS304で正しいです。
Q. SUS316と書いてあるのに錆びた、なぜ?
A. 以下のいずれかの可能性が高いです:
異種金属との接触(電食)
表面に鉄粉が付着してもらい錆
溶接部の鋭敏化(SUS316Lなら回避できた)
実は偽物で材質が違う(信頼できる商社からの仕入れを)
Q. SUS304とSUS316、見た目で見分けられる?
A. 見た目では区別不可能です。発注時のミルシート(材料証明書)または専用の蛍光X線分析が必要。信頼できる仕入先からの調達が最も確実です。
Q. 食品工場ではどっち?
A. 一般の食品ライン(パン・菓子・乳製品など) → SUS304 で十分。塩蔵・醤油・漬物・水産加工 → SUS316 推奨。HACCP対応もSUS316Lが選ばれる場面が増えています。
Q. 自動車ボディの錆び対策に使える?
A. ステンレスは可能ですが、コスト的に現実的でないことが多いです。通常は炭素鋼+亜鉛フレーク(ジオメット等)の高耐食めっきで対応します。
☕ もうひとつ余談:ステンレスは「錆びない」ではなく「自分で治す」金属。 ステンレスが錆びにくい正体は、表面にできる不動態皮膜(ふどうたいひまく)という、目に見えないほど薄い透明なバリアです。すごいのは、このバリアが傷ついても、空気中の酸素とすぐ結びついて自分で修復すること。まるで擦りむいた肌にかさぶたができて治るのと同じ。SUS316は、このバリアが塩分にも強い"特別仕様"です。だから「ステンレス=錆びない」ではなく「錆びても自分で治せる、けど塩はちょっと苦手」が正確な姿なんです🩹
まとめ:SUS304かSUS316か、迷ったときの3原則
1.環境を最優先:塩分・薬品があるかが最大の分岐点
2.コストを軽視しない:SUS316はSUS304の1.5〜2倍
3.規格表記を正しく:A2-70 / A4-70 を使い分ける
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